エッジはいかにして実現したか
高速ロングタームエボリューション (LTE) および次世代の5Gネットワークが、モバイルエッジコンピューティングを可能にしています。というのもエッジネットワークは、拠点に近いユーザーへより効率的にコンテンツを伝送するための技術であり、移動通信用の中継塔と連携したり、最終的にファイバー接続へとつながる5Gへアクセスしたりするからです。
さらに、IoTがこれに拍車を掛けます。シスコシステムズによると、500億を超えるITエッジデバイスがインターネットへ接続するとされています。エッジコンピューティング移動体によって生成されるデータ量は、2020年までに2016年の4倍になるという予想もあります。この予測に従えば、エッジネットワーク型のデータセンターは、処理速度と安全性の向上のため必要不可欠になるでしょう。
エッジネットワークの一部となるデータセンター、またエッジサービスについては、Google等のコンテンツプロバイダーが熱心な取り組みを見せています。クラウドフレアやベライゾンなど8社をパートナーとするGoogleのCloud CDN (コンテンツデリバリーネットワーク) 構想では、顧客がエッジネットワークの一部をなすCDNプロバイダーを利用してサービス提供地域の取引先へデータを送信した実績があれば、クラウドサービスの価格について優遇措置を受けられます。
ITエッジで配信されるデータの増加に鑑みて、データセンターの設計も見直す必要があるでしょう。エッジネットワークを運用するためのデータセンターは、より小さな規模となり企業のニーズを満たしていく、というのが新たな共通認識です。様々な産業分野のリサーチ企業であるガートナー・グループは、データセンターのネットワークトポロジーは今後5年かけて現在の集中型メガデータセンター的アプローチから、コンテンツおよび情報の分散型スモールソースに多数支えられるモデルへ発展するとしています。ここで言うコンテンツおよび情報の分散型ソースとは、企業の所有するデータセンター、ホスティングプロバイダー、コロケーション、またはクラウドのことを指します。
しかし、多くの方にとってはまだ疑問でしょう:結局エッジとは何なのか? 上記のような共通認識、およびITエッジで行われるモバイルエッジコンピューティングをはじめとした様々なタイプのコンピューティングに対する需要があることは分かっても、エッジネットワークについては多種多様な定義があるのが実情です。例えば未だに、ひと昔前のコンテンツデリバリーネットワークのような、エッジサービスのユーザーに向けて静的コンテンツを送り出すよう設計されたデータキャッシュとして振る舞うものを連想される方もいます。
けれど昨今のワークロードはコンピューティングに傾いています。ガートナーの調査によれば、CDNと「エッジ型アプローチ」の極めて重要な違いは、各手法が提供するもの、およびITエッジの双方向トラフィック制御の程度にあります。
著名なデータセンター産業専門家グループであるインフラストラクチャー・メイソンズは、ITエッジのデータセンター、すなわちデータ発信元やユーザー層の近辺に位置するコンピューティング設備、空間、並びに施設は、システム障害復旧の妨げにならない限り必要で、遅延を最小化できると見ています。
インフラストラクチャー・メイソンズの結論として、ITエッジの確立および存続のためにはハブやコアが必要であり、コンピューティングの分散=エッジコンピューティングとして、物理的な筐体、空間、そして施設をエッジ設備と定義することが可能になるのです。
こうした設備が顧客に提供する近接性、そしてそれによるルーティング短縮、遅延低減、ネットワーク輻輳の予防を通じ、データセンターおよびモバイルエッジコンピューティングは実現するとも言えます。